手島圭三郎の絵本

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先日HNK教育の「日曜美術館」で手島圭三郎の木版画絵本が取り上げられていた。高齢となった作者の、最後の引退作品の制作過程を追いつつ、過去の作品の紹介や画家の生い立ちを折りまぜる構成。

すっかり感心して、村の図書館でいくつかの作品を借りてきた。

 

まず力強い木版画のタッチが素晴らしい。特に、冬の夜の森や湖の描写が、その場の凍った空気まで感じさせる臨場感。さらにその舞台で躍動する鳥類・哺乳類・魚類などの野生動物の姿が、まさにそれをよく観察してきた人ならではの説得力を持って描かれている。

絵本で自然、特に野生動物を描く場合、たいていは擬人化がなされる。動物の行動を理解するためには、人間の行動や感情と照らし合わせる作業が必要となるからだ。しかしこの擬人化も行き過ぎると、その動物の姿形だけを利用し、人間替わりの役者として動かすことになる。ピーターラビットシリーズなどはそれに当たる(野生動物の生態を描く意図の作品ではないのでどうでもいいことなのだが)。

一方、手島作品では擬人化は行っているものの、それは必要最低限に抑制されている。親子の愛情や野生動物の孤独感など「感情」に関して人間的な表現を行うが、画そのものはあくまでも野生の姿を描いている。そして複数の作品(全部読んだ訳じゃないのだが)で、「死」を大きな要素として取り扱う。

オオハクチョウの子供の死、シマフクロウのオスの死、キタキツネの死、こうした主人公クラスの動物達の死に加えて、彼らに捕食される食物連鎖下位の小動物や、死んだ動物を食べるカラス等の腐肉食動物も頻繁に表れる。

※書き中