さて、仕事も終わらせないまま我々は榛名山に向かった。横浜の家で自動車からカヤック
を下ろし、まず三鷹に立ち寄って妻さんの妹さんをピックアップし、谷原〜関越〜渋川伊香保IC
で一般道に降りたときにはすでに雨が降っていた。
ここより伊香保の温泉街を抜けて榛名湖に出るワケなのだが、標高が上がるにつれて霧が濃く
なる。かつてバイクに乗っていたころ、この近辺の林道を走った事があった。その当時の記憶に
よれば、榛名湖の手前には2km位の直線道路があり、あたかも北海道のような景観が楽しめた
筈なのだ。
しかし今回は濃霧により、前方を行く自動車の尾灯が微かに見えるのみである。
首尾良く榛名山荘に到着した我々は、かねてからのプランである「薫製づくり」に着手した。
横浜の家付近の豆腐屋さんで貰った一斗缶を改造した簡易スモーカー、5年前に会社で貰ったサクラ
のチップ、四隅に針金を配した焼き網などを駆使して薫製を作ろうというのである。
とりあえず初心者なので簡単なものから実験を始める。簡単なものとは、チーズ及びソーセージで
ある。いきなり生ハムなんかできないのである。
えーさて、スモーカー内に適当な大きさに切ったチーズを並べ、燻煙を開始する。すぐにフタ代わり
のアルミ箔のつなぎ目から煙りが立ち始めた。おお、良い感じだ。
15分ほど経過したところで状態を見ると、うん、なんか薫製っぽい仕上がりだぞ。
が、しかし。試食してみると、この薫製が大失敗であったことが明らかになった。
まず、チーズが一部溶けている。溶けないチーズじゃなかったのかよ!さらに、非常にきつい渋味が
ある。なんというか、木酢液とクレオソートの混合液を塗りたくった感じ。とても体に悪そうだ。
失敗の原因は幾つもあるのだが、箇条書きにすると、
- 薫製のハウツー本を熟読せず、ナナメ読みで済ませた
- 温度計を忘れた
- 初回なのに、たくさんのチーズを並べてしまい、被害を拡大した
などである。特に温度計を忘れたのが痛い。
さて二回目はソーセージを燻煙する。前回の実験から、スモーカー内はかなり高温になることが
分かったので、チップの量と火力をこまめに調整し、燻煙時間も短めにする。
ソーセージの内部まで温まったくらいでスモーカーから出し、試食すると、確かに前回のような
非人間的な物体では無い。まともに喰える。
しかし、ソーセージと言う物は、そもそもメーカー段階で薫製処理されているので、ここでの燻煙
によって歴然とした違いは現れない。「まあ、少し香ばしさが増加したかな」といった感じ。
そんなこんなで、濃霧の榛名山中で決行された薫製作戦は今後に課題を残す結果となったのである。