新潟県長岡市でロケ

 厚生労働省関係の仕事で、高齢者雇用促進に関するビデオの取材。
これは、厚労省の外郭団体が毎年実施している雇用促進キャンペーンの一環であり、
全国各地の優良事例の中から三例を紹介するというものです。

 労働意欲のある高年齢者に、もっと就業の機会を!と言えば格好良いのだが、
現実には年金の給付年齢引き上げと給付額低下に伴って、年寄りでも働かねば生活が
立ちゆかないから不可避的に働くんだよ!と年寄りの方々に罵倒されても私は反論でき
ないのだ。
 
 などと思いつつ東京発のMAXとき号に乗り込む我々一行であった。私は是非とも
二階席に乗りたかったのだが、「荷物の上げ下ろしが面倒くさい」という技術スタッフの
意見に押され、やむなく一階席に座ることとした。でもな、一階席も半地下みたいなもん
だから、荷物の上下移動の収支は結局一緒なんだよ。と気付いたのは実際に乗車してから
だったのでありました。

 長岡市は以前バイクで通過したことはあるものの、滞在するのは初めてだった。
そうかここに神林長平が住んでいるだな、と少しSF的な感慨に浸った後、取材先の工場
に向かう。

 取材先は工作機械の製造販売をしている技術系の会社である。主たる製品はNC制御による
大型立旋盤なのだが、この他に「CNC床下型車輪旋盤」でも全国シェア一位を誇る。これは
鉄道車両の車輪のメンテナンスに用いられるシステムであり、車輪の歪みを切削加工によって
補正するものである。非常にデカイ。

 この会社では全従業員数70人のうち、55歳以上が11人・16%を占めている。しかも、
みな一騎当千の職人さんである。熟練した機械加工・組立技術を有しているため、会社としても
彼等の能力に依存するところは大きい。というか彼等がいないと仕事が進まないとすら言える。
 故に、これまで60歳だった定年年齢を65歳に延長し、その後も本人の希望通りに再雇用を
行うことは半ば必然であった。
 
 そんな特殊な例を持ち出して、ビデオを見る人の参考になるのかね?こういっては何だが、
高齢者雇用対策の対象となるのは、ごく普通の、特殊な技能を有さない定年退職者であり、
ここのような「職人」にはそもそも定年なんか関係ないじゃん。

 …と思いつつも仕事は仕事で粛々と進めるんですね。

 NC制御機械を間近で見るのは初めてだったので面白い。これまで経験と勘によって制御され
ていた工作機械に、コンピューターによる数値制御を持ち込んだのがNCなのですが、なんというか
機械が自律的に作動してる雰囲気が非常によい。溶接ロボットなんかも自律的なのだが、あっちは
妙に擬人化できてしまうので、かえって興ざめなの。SFを感じないの。
 「NC旋盤という工作機械を作るために、NC旋盤やマシニングセンタといった工作機械を使う」
という過程が興味深いんだな。入れ子構造というかタイムボカンの「メカの素」というか。

 とまあ、ここではNC機械を運用する一方で旧来の機械も併用しており、そこに職人の技が必要
とされるワケなんですね。

 そんなこんなで、長岡市の取材は順調に進むのでした。