先日、川で行方不明になった人の捜索に出た。
河川工事の技師が夕方、堰堤のスリット(1m程度)を飛び越えて反対側に行こうとして、届かず18m下に落下したという。下は増水した濁流とのこと。
即座に工事関係者等が捜索に当たったが日も暮れて発見できず、翌早朝から消防団、消防署、警察、工事関係者らによる捜索が再開された。

捜索は落下地点から下流に向かって流域を幾つかの区画に分け、各班が川筋を追う形なのだが、土石流の危険があるため、両岸からの目視となった。つまり、最も要救助者がいる可能性が高い、水の流れている場所に近寄れない。
非効率的に見えるが、捜索する側の安全を確保する必要があるため仕方ない。

私は最初、下流方面の区画を探す班に入ったが、現場に向かう途中で『ドローンで上から見て欲しい』との連絡を受けた。

自宅にとってかえし、ドローンを確認すると、バッテリー3本全てが半量程度の充電状態だった。
このため、バッテリーチャージャーも持参し、現場工事事務所で充電しつつ飛行することにした。
半量のバッテリーでとりあえず飛行し、その間に残り2本を充電する方式。

すでに役場の1機と民間の1機が飛んでおり、私の1機も加えた3機で、それぞれ決められた区間を捜索する。なお、区間の設定や重点的に見るべきポイントは、現場事務所に置かれた捜索本部が指示管理する。

またドローンを飛ばす際は連絡係が同行し、本部からの指示伝達やこちらからの報告のやりとりを行う。

スタート地点の橋まで下り、30分程度の待機(飛行中の別ドローンとの接触防止のためと聞いた)ののち、一回目の飛行。搭載カメラを直下に向け、無線で送られてくる映像を手元のモニター(スマホ)で確認するのだが、見落としの無いよう極低速で進むため、半量程度のバッテリーではすぐに低電圧アラームが鳴ってしまう。そしてバッテリー残量が限界に達すると、機体はGPSで出発地点に帰還する。
この回の飛行距離は752m、時間は9分にとどまった。

本部に戻り、機体に挿入されていたSDカードを担当者に渡す。撮影した映像をパソコンのモニターで再度、複数人で確認することで見落としを防ぐそうだ。

充電していたバッテリーは約70%まで回復。これをもって二回目の飛行。先ほど捜索しきれなかった場所をカバーする。しかし発見には至らない。川から脱出して河原に居る可能性もあるとのことなので、前回よりも若干高度を上げて広範囲を見る。

このようなドローン捜索を、さらに二回繰り返す。通常の撮影時は『操縦者から機体が目視できる範囲』までしか飛ばさないのだが、今回は河川の屈曲した場所の更に向こうを確認する必要があったため、機体のGPS機能を信用して目視外飛行をした。

ここで昼の休憩に入ったのだが、その一時間後に再集合した時点で、要救助者は発見されていた。
『どうしても見落とした場所があるので、もう一回だけ飛ばしておく』と判断した民間のドローンが、落下地点の200m下で、流れの中にそれらしき物体を見つけたそうだ。残念ながら遺体であった。

捜索に参加した3機のドローンはすべて、中国DJI社のファントム4シリーズという比較的安価なモデル(20万円程度)だった。
しかし、この程度のドローンでも高密度(たった3機だけど)・高頻度で飛ばすことによって、今回のような状況下ではかなり有効な捜索手段になることが分かった。

樹林地のように上空がオープンではない状況での運用は今は厳しいと思うが、最近では下水道など狭くて閉塞した空間でも飛行できる『球体型ドローン』も開発されているようなので、いずれは低山での道迷い遭難者や山菜・キノコ採り遭難者の捜索にもドローンが参加することになるのだろう。


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