ポンテ(猫・♀)の脱走

妻は合宿免許だし、私は会社に行ってしまうので日中の我が家にはポンテしかいない。
ちょっかいを出す人間がいないと猫もヒマをもて余し、それがストレスとなって、先だっての
ように猫砂の袋を破ったり、台所スポンジを引きずり回したりと悪さを働くようだ。

 なので、なるべくポンテが退屈せぬように、ちょくちょく家の外に出すようにしている。
 といっても、完全な自由行動をさせると危険に思われるので、首輪+リードを付けての外出だ。
猫の本分を考えるとこの方法はあまり良くないのだが、致し方なくこうしている。

 今朝も同様にしてポンテを表に出したのだが、しばらく遊ばせていると、近所の飼い猫(黒)が
近くを通りかかった。黒の方は首輪こそ付けているが完全なフリー状態。その途端、ポンテが黒を
追って走り出した。尻尾が大きく膨れ、背筋の毛も立っている。私も負けじとポンテを追ったのだが、
その途中でリードと首輪が分離してしまった。私は野に放たれたポンテを見失ってしまった。

 あの世間知のないバカポンテが、この生き馬の目を抜くような大都会・新子安でいつ自動車事故
列車事故に遭うとも知れぬ。遠くに行ったらきっと戻ってこれないだろう。どうしよう。どうしよう。
 貼り紙をしたらいいのか?そうだ首輪は付いているんだから、写真付きの貼り紙を作ればきっと見つ
かるだろう。いや、それはもうすこし後の段階の話であって、今はポンテの行きそうな場所を探すのだ。

 と、隣の団地の駐車場に行くが奴はいない。線路の方かな?だがそんな姿も気配もない。向かいの
マンションか?いない。まずいなあ、もしポンテがいなくなってしまったら、妻に何と言おう。
いやそんな事は後回しだ。おーいポンテー、出てこーい。


 しょうがないから今日は会社を休もう。この不安な状態で会社に行っても俺は何もできん。

 と、30分ほど家の周囲をウロウロと探し回り、地面にしゃがんでみたりしたがポンテは発見でき
ない。ひょっとして家の中に戻ったかも、と思い、室内をくまなく探したが徒労だった。本格的に不安に
なってきた。

 ふたたび捜索範囲を少し広げてポンテポンテと言いながら探す。そうこうしつつ、また我が家の前を
通った所、向かいの定食屋さんのご主人が私に言った。「猫ちゃん、そこに居るよ」。え?どこ?
「そこの車の下」しゃがんで見ると、いた!うちの自動車の隣に駐車している車の下にポンテがいるでは
ありませんか!…どうやら動転した私は、最も基本的な探査ポイントを見過ごしていたらしい。ここは
日頃からポンテが入り込む場所だったのだ。やれやれ。