10月18日に関する記述

 早朝7時、積丹カヤックス・西村さんから電話。「今日のワンデイは決行でーす」。
再び積丹に戻ってきた甲斐があった。食事を済ませ、荷物をまとめる。持参したウェット
に着替え、野塚の積丹カヤックスに向かう。
 妻さんもウェットに着替え、西村さんのジムニーで出発。野塚海岸から入珂を経て幌武意へ。
途中から見る海は少々波立っている。が、こちらは西海岸であり、本日のコースである幌武意〜
浜婦美は積丹岬をはさんで東側である。故に波も静かであろう。

 幌武意漁港の端には、すでにフェザークラフト・K2とウィルダネスシステムズ・テンペスト
2艇が準備されている。
 K2はアルミフレームと船体布で構成された二人乗りのファルト艇で、私と妻さんが乗る。テンペスト
は初見だが、サイズ・デザインともに英国・バリー社の名艇アヴォセットに似ている。こちらは西村
さん。

 浜で基本的なパドリング技術と沈したときの脱出方法のレクチャーをうける。フェザーの船に乗る
のは初めてだったため、私は後者のレクチャーのみ受ける。ラダーを外してあるため、フットレスト
無い。少々不安だがまあなんとかなるか。

 K2前席は妻さん、後席は私。出艇し西村さんを待つ。

 本日のコースは幌武意漁港から東北東に進み、マッカ岬を越して浜婦美に上陸して昼食。再び
幌武意に帰投する予定。以前に何度か漕いだことのある場所だ。

http://watchizu.gsi.go.jp/cgi-bin/bl.cgi?b=432128&l=1403041
 

 さて後席から妻さんのパドリングを見ると、前に西伊豆に行った時よりも上手くなっている。
西伊豆で教えたのは私、今回教えたのは西村さん。どうやらその差が出たらしい。ただ、漕いでる
うちにパドルを握る両手の間隔が狭くなりがちなので、逐次声をかけて修正してもらう。
 二人艇の場合、もちろん両方が漕ぐのだが、進路を決めるのは後席であり、前席は進行方向にある
隠れ岩などを後席に伝える役割を担う。が、それはシビアな状況下でのことであり、今日はそれほど
でもない。

 フットレストが無いので踏ん張りがきかないかな?と思っていたが、アルミフレームに足がかりが
あるため、そこそこ踏ん張れる。ファルト艇は材質上、ポリ艇・FRP艇に比べ船足は遅いのだが、
水に馴染み柔軟性があるので、安定性が高くなる。私が普段使っているノーライト・シュマールとの
比較をすると、

    ■シュマール    ■K2
 全長  5.5m      5.87m
 全幅  56cm      84cm
 重量  19kg      39kg
 材質  ケブラー      アルミ+布

 …やはり全幅の差が大きい。材質とともに、これが安定性に貢献している訳だ。

 西村さんはつかず離れずの距離を保ち、要所要所で声をかけてくれる。
そしてマッカ岬。積丹岬を回り込んだ波は、開けた海面では波長の長いうねりのままだが、ここマッカ
岬の岩礁地帯では複雑な反射波となっている。こうした海面全域が不規則に波立っている状態だと、
ついつい腰が引けてパドリングもおっかなびっくりになりがちだ。が、カヤックは推進力を与えられて
いる状態でこそ、最も安定する。つまり、こうした海面状況の時こそ、より力強く漕がなくてはならない。
 妻さんに「はい、力強く漕いで!」などと声をかけつつ、私も全力で漕ぐ。
 海面近くの岩礁が波の上下動に従って顔を出し、また沈む。その際の轟音と渦が剣呑な感じだ。が、
先導する西村さんに従って進むと、いきなり平穏な水面に出る。周囲を岩に囲まれた伽藍のような水路。
 西村さん曰く、「マッカ」とはアイヌ語で「ルートがある」ことを表すという。それがこの、岬内の
水路を指すのか、はたまた岬上の陸路を指すのかは特定できないが…。


 マッカ岬を越すと海面は再び穏やかになり、上陸地点の浜婦美も視界に入る。陽も差し、温かい。
妻さんが、自分のパドリングがカヤックの推進に貢献しているかどうかテストしたいという。成る程、
よい心がけだ。ということで後席の私は手を休め、妻さんのみが漕いでみる。うん、遅々とした加速だが、
ちゃんと進んでいる。ここで私は前席の妻さんに気付かれぬよう、バックストロークを入れる。妻さんの
前向き推進力を私が相殺したのである。西村さんはニヤニヤしている。

 と、イタズラもおえて浜婦美に上陸。ここにはかつて集落があったのだが、現在は漁師さんの倉庫が
あるだけの浜である。陸路で来ることもできるが、深い藪道を歩かなくてはならないため、夏でも来る人
は多くない。

 流木を集めて焚き火の準備。無駄に大きな火を焚くのではなく、料理に必要最低限な火力が確保出来れ
ばよい。西村さんはあれよあれよと火をおこし、紅茶を入れ料理を始める。
 ブロッコリーを海水で洗って茹で、切ったパプリカとミニトマトを混合。そこにニンニクを入れて熱した
オリーブ油をかけ廻す。見た目も綺麗なサラダが出来上がる。
 さらにシーフードミックスを炒める。事前に炊いてきたご飯をダッジオーブンに広げ、先程のシーフード
をのせます。次にホワイトソースと溶けるチーズをのせ、フタをしま〜す。フタの上にもオキをのせ、
しばらくの間、上下から熱を加えま〜す。するとあら不思議!(不思議ではない)あっというまに美味しい
シーフードドリアの完成でぇ〜す!

 相変わらず手際が良い西村さんなのでした。天気は穏やかで暖かいし、海も綺麗で波音も心地よい。こう
した状況の良さを差し引いても、料理はそれだけで美味しかった。

 食後、周囲を散策する。おりしも大潮近辺の日だったので、潮ひきまくり。磯あるきにはもってこいで
ある。このあたりの岩場には直径1m〜4m位の穴ぼこが幾つも空いている。人工的なものなのかポット
ホールなのか不明だが、それぞれの穴をのぞき込むと、ウニや小魚、ヤドカリ等が豊富に入っている。
 まるで穴の一つ一つが独立した生命圏であるかのように感じられる。潮が満ちれば全部一緒なんだけど。

 帰路も若干荒れた場所はあったものの、往路に比べて馴れてきたせいか緊張は無かった。
カヤック二艇を上げ、ジムニーに積む。少し無理のある積載方法だが、これでいいのだ。

 積丹カヤックス事務所で着替え、ひとしきり雑談してから辞す。次に西村さんと漕ぐのはいつになる
ことか。

 明日のフェリー乗船に備え、小樽に移動する。その前に高野ファームに寄って挨拶がしたかった。
が、健二さん居ない。豆の脱粒機を近くの農家さんに返しに行ってるとのこと。諦めて自動車を出した
が、婦美のバス停あたりで健二さんと邂逅。よかった。

 お土産を買うために、余市近郊の薫製屋さんに立ち寄る。ここは昔ながらの製法での薫製作りに
励んでおり、非常に美味という。値は少々張るが大量に買い込む。

 小樽ではどうでもいいビジネスホテルに泊まる。